『自動車絶望工場―ある季節工の手記』 鎌田 慧(著)

【評価】 ★★★★
【一言】 それでも希望はあったのか?

自動車絶望工場―ある季節工の手記自動車絶望工場―ある季節工の手記
鎌田 慧

講談社 1983-09
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年末に読んだアマゾン潜入ルポの中で登場した『自動車絶望工場』
読む気はなかったんですが、Amazonカスタマーレビュー(客/読者の投稿した感想)を見たら、思いの他 真面目な文章が多く、評判も悪くないので図書館で借りました!


【概要】
1972年9月~1973年2月までの6ヶ月間、著者(当時34歳)がトヨタ季節工として働いた実録。
本は全7章+補章(トヨタ合理化の歴史)、あとがき、解説、著者の年譜という構成。

【注意事項】
※以下、本文の引用を含むネタバレ感想となりますので、ご注意下さい。




【感想】
う~ん・・・。
すごい労働環境だとしか言いようのない内容。
本を読むと、そこに書かれた地獄絵図(笑)に驚きます。

特に作業現場において、労働者の指切断が日常茶飯事だとか、労災死亡も本人の不注意として片付けられているとか、すさまじい。

そして、著者と同期で入った季節工の工藤君(当時21歳)は、過酷な労働に耐え働いていたが、一度倒れただけでクビ。
労働者をモノとしか見ていない様子が淡々と語られています。

この一秒たりとも自由にさせないほどの労働密度があるということをいままで知らなかった。 (p43)

毎日2.5kgの労働量か。 (p76)

顔を洗って鏡を見てはっとした。 負けてしまった顔だ。 (p82)

芦野君(18歳) 新聞の募集では、「単純軽作業」と書いてあったが、これじゃ「複雑重労働」だ、とぼやいている。 (p96)

これ以上働けないほど働かされている実感 (p114)

あの苦しい労働のピリオドがこんなにあっけないものか。 解放感、というより、疲れと虚脱感。 (p211)

『自動車絶望工場』 鎌田 慧(著), 講談社文庫, 1983年より引用

 
慣れることのない疲労感が切実(苦笑)
そして毎日、その日の出来事を記録していた著者は(仕事とはいえ)すごい。
『アマゾン・ドット・コムの光と影』では、トヨタの工場が「絶望工場」足りえたのは、当時はまだそこに“希望”があったからにほかならない (p121) と書かれていたけど、本当に希望なんてあったの?と思える惨状が描かれていました。


【その他】
・ トヨタは軍需産業で発展してきたという話に驚く。(知らなかった)
・ 労働者には自衛隊除隊者が多い。 (体力・忍耐力・忠誠心があるから?)
・ 文章は思ったより硬くなくて読みやすい。
・ 文字の表記がやや古い。 (例:かの女⇒彼女、月賦⇒ローン)


【おまけ】
とはいえ、これは30年以上昔の話。
現在の季節工とは違うだろう…と考えるのが普通です。

そこでインターネットで検索してみた所、
2004年9月~2005年3月まで季節工を経験した人のサイトを発見。

■ トヨタ自動車期間従業員への道

でもこれを読む限り、『自動車絶望工場』の内容と大差ない感じ(冷汗;)
まぁ指切断事故などは減っていると思いますが、過酷な重労働には変わりないようです。

著者自身としては、十年前に書いた現実が、労働者にとって緩和され、絶望が希望に展化し、この記録そのものが否定される時代になるのを望んでいる (文庫版あとがき p291 より引用)




早く、そんな日が来ることを私も願います(笑)


【備考】
読書日: 2006年3月24日~25日
読書時間: 4時間30分くらい


【関連記事】
感想 『アマゾン・ドット・コムの光と影』 横田 増生(著) 
潜入ルポ アマゾン・ドット・コムの光と影―躍進するIT企業・階層化する労働現場




▼2000年に出ていますが、続編? 既に在庫切れでレビューなし。
4795405174自動車王国の暗闇―その後の絶望工場
鎌田 慧
すずさわ書店 2000

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