島田荘司 『御手洗潔のメロディ』 『最後のディナー』 『セント・ニコラスの、ダイヤモンドの靴』  ネタバレ感想

参考URL
御手洗潔 - Wikipedia  :シリーズ概要や作品タイトル(出版年)等
御手洗潔 事件年表 :事件の順番や登場人物の年齢の参考に。
 *御手洗潔(1948年生まれ)、石岡和己(1950年生まれ) 作中で二人も年をとっていきます。

当ブログ記事
御手洗潔シリーズおすすめ本 - タイトル一覧
御手洗潔デビュー作『占星術殺人事件』、それより過去を描いた『異邦の騎士』(ネタバレあり)
『斜め屋敷の犯罪 - 改訂完全版』 ネタバレ感想
短編集『御手洗潔の挨拶』『御手洗潔のダンス』、中編『Pの密室』(ネタバレ感想)
『最後の一球』(ネタバレ感想)
『暗闇坂の人喰いの木』(ネタバレ感想) 


以下、ネタバレ感想
御手洗潔のメロディ (講談社文庫)
御手洗潔のメロディ (講談社文庫)

何度も壊されるレストランの便器と、高名な声楽家が捜し求める美女。無関係としか思えない2つの出来事の間に御手洗潔が存在する時、見えない線が光り始める。御手洗の奇人ぶり天才ぶりが際だつ「IgE」のほか、大学時代の危険な事件「ボストン幽霊絵画事件」など、名探偵の過去と現在をつなぐ4つの傑作短編を収録。


「IgE」 (御手洗42歳、石岡君40歳)
「SIVAD SELIM」 (御手洗42歳、石岡君40歳) 45歳の石岡君の回想
「ボストン幽霊絵画事件」 (御手洗18歳頃、大学生時代)
「さらば遠い輝き」 (*二人は登場せず、第三者の会話内で登場、時間軸は御手洗49歳・石岡君47歳)

「IgE」 
軽めのミステリでこういう話は好きです。 二つの謎が結びつく辺り いつもながら上手いです。
しかし、この頃の石岡君はだいぶ御手洗に依存している様子が強いですね。
単独での張り込みに怯んだり、事件の真相を聞くときの言動についても。 

この御手洗の言葉。これが彼の海外行きの伏線になっていくのでは…とさえ思いました。 (石岡君は自分と一緒にいるとダメになってしまうと感じて)

「石岡君、それじゃあ一生成長しないぜ。死ぬまでそうやって、誰かが出してくれる答えを待って暮らすつもりかい?」
(島田荘司,『御手洗潔のメロディ』講談社文庫・2002年, 「IgE」p120より引用)



<追記> 
長編『水晶とピラミッド』を斜め読みしたところ、その頃から既にそういう話がありました。
仲良しの犬が死んで鬱病になった御手洗が石岡君に「君は僕と一緒にいるとダメになる」みたいな。
石岡君は自分が御手洗に捨てられかけてることに焦っていましたが…。


「SIVAD SELIM」
ミステリではなく、クリスマス向けの短編で良いお話だと思います。
あらすじは、12月中旬のある日、高校生が主催する身障者向けのコンサートに御手洗への出演依頼があり、それを受けた石岡君。
しかし御手洗には、その日は大事な約束(アメリカの友人の来日)があるから絶対に無理だと断られてしまい…。

この話の中で石岡君は、御手洗に断られて激しい憤りを感じている訳ですが、これはお門違いですよね。

“まさか断られるなんて思ってもみなかった”という気持ちを前提として、
弱者に優しい御手洗なら、きっと引き受けてくれる。
これだけ頼んでいるのだから、先約を蹴ってでも自分の願い(コンサート出演)を聞いてくれる。

こういう期待や甘えがあっての言動なのだと思います。

あれだけ「友人と会えるのは、本当にその日一日しかないんだ」と言っているのだから、彼の事情を察してあげることはできないのか… 
(さすがに私でも先約の友人は身体が悪いとか理由があるんでしょ、と思いました)

御手洗の言い方も簡潔なので、
『友人は年長者で身体の具合が芳しくなく、おそらく、これが最後の来日になる。 今 会わなければ、もう一生会えないんだ』 とまで言えば、石岡君も早く引き下がったと思いますが、そこまで言いたくない気持ちもわかります。

最後、友情出演みたいな形でコンサートに来てくれるのはお約束ではありますが、良い締めだったと思います。
石岡君もいいところなしだったけれど、審査員や苦手な挨拶をすることになったので、罰は受けたということで。

「ボストン幽霊絵画事件」 
ハーバード大学・在学中に御手洗が解決した事件の話。10代の御手洗さん。

「さらば遠い輝き」
海外で活躍する御手洗の助手ハインリッヒと、御手洗に惚れた女優・松崎レオナのデート話。
二人の出会いやデート(食事)の話は、正直どうでも(以下略)

この中で数ページですが、『異邦の騎士』における御手洗と石岡君の出会いについて触れる場面があり、これが一番の見どころなのだと思います。

改訂完全版 異邦の騎士 御手洗潔 (講談社文庫)

『異邦の騎士』で記憶喪失の彼が御手洗のアパートに飛び込んできた時の御手洗視点

「青年は何もする力がなく、収入の道も、それを探す方法も思いつけず、しかも恐ろしい陰謀の道具にされていて、このまま放っておけば命にも関わった。」  (中略) 

「助けてやらなければと、自分が命をかけてこの青年を助けてやらなければと思った。 (中略) 
自分一人だけで気ままに生きていくんじゃなく、時には誰かを導いてやらなくてはならないという自覚だ。 ぼくにはその使命があった」

(島田荘司,『御手洗潔のメロディ』講談社文庫・2002年, 「さらば遠い輝き」p387-388より引用)



何というか、石岡君はここまで思ってくれる相手に出会えたことが幸せですね。しかし10年近く一緒に暮らした後、御手洗が石岡君を一人残して旅立ったのもまた、彼のためなんだろうなと思います。
一緒にいれば事件が舞い込み刺激があるし、御手洗の世話(主に家事)をしていれば体を動かす日課もあり、生活にハリがあることでしょう。

でも、それって結局 御手洗に依存している状態ですよね。
二人が夫婦なら それもアリでしょうが、現実には大人の男性同士、友人関係なので、このままでは石岡君は困る訳です。
事件解決に対しても、一人で動くのは非積極的であり、謎の解明も御手洗に完全にまかせきり。
優秀な御手洗を前にして、彼を信頼しながら、自分は自信喪失していくという。

作者あとがきで
 「女性読者からは早く御手洗を横浜の石岡の元に戻せと、矢の催促を受けている。その声は、今も続いてる」(2001年)
とありますが、御手洗が石岡君の元に戻ってくるとすれば、それは御手洗シリーズの最終回のような気がします。
その時点で石岡君は、一人でやっていける状態になっていないとね。




最後のディナー (文春文庫)
最後のディナー (文春文庫)

ミステリー作家の石岡は女子大生の里美に誘われて英会話学校に通い始めた。ふたりはそこで知り合った孤独な老人・大田原と親交を深めるが、大田原はイヴの夜の晩餐会を最後に帰らぬ人となった。老人はなぜ、「神を見た!」と叫んだのか。御手洗が見抜いた真相とは?「龍臥亭事件」の犬坊里美が再登場。表題作など全3篇。



石岡君と里美さんの話が収められた短編集。
初期作品の『異邦の騎士』、できれば『龍臥亭事件』も読んでから、この本を読んだ方がいいでしょう。

「里美上京」 (石岡君46歳、里美さん19歳)
「大根奇聞」  (石岡君46歳、里美さん19歳)
「最後のディナー」  (石岡君46歳、里美さん19歳)

改訂完全版 異邦の騎士 御手洗潔 (講談社文庫) 龍臥亭事件〈上〉 (光文社文庫) 龍臥亭事件〈下〉 (光文社文庫)

「里美上京」
ミステリーではなく、『龍臥亭事件』で知り合った女の子・里美さんと石岡君がデートする話。
御手洗がいなくなってから、一人暗い生活を送る石岡君の元に、一筋の光が…。
石岡君は年甲斐もなく彼女のことが大好きなんですが、その辺の理由がわかるお話でもあります。
これで、石岡君はやっと過去への区切りをつけられたのかな。

「思えば今日、二十年前に良子と歩いたのとほとんど同じコースを、私は里美と歩いた。」 (中略) 
今日という一日、私はこの女の子の陽気なオーラにすっぽりと包まれていて、それがモルヒネのように、私の痛みを消したのだ。」 (中略)
「神は死んだ良子の代わりに、こんな生まれ変わりを私のもとに送ってくださった。」

(島田荘司,『最後のディナー』原書房・1999年,「里美上京」p41-42より引用)



「最後のディナー」
鬱気味の石岡君を心配した里美さんが英会話教室に彼を誘う話。
やがて、そこで知り合った男性に関連した事件が…

これも最後はクリスマス時期の物語です。
自分が御手洗シリーズの短編・中編を次々に読んだせいか、クリスマス時期の話が必ず入っていて、少し飽和状態。

御手洗は、石岡君との電話の会話でのみ登場。
しかも大学の仕事で忙しいからと言って、さくっと事件解決をしてくれてさすがです。
全体としては、ミステリというより石岡君の人情系の話という感じでした。


セント・ニコラスの、ダイヤモンドの靴 (角川文庫)
セント・ニコラスの、ダイヤモンドの靴 (角川文庫)

「占星術殺人事件」の直後、御手洗と石岡のもとを高沢秀子という老婦人が訪れる。最初はひやかしの客かと思われたが、秀子の知人・折野郁恵の話を聞いた御手洗は「これは大事件ですよ」と断言する。教会への礼拝中、雨が降り出すや郁恵は顔面蒼白となり、その場に倒れ伏したというのだ。その奇妙な行動の意味とは?ロマノフ王朝から明治政府に贈られた“ダイヤモンドの靴”を巡り起きた事件を御手洗の推理が解き明かす。



「シアルヴィ館のクリスマス」 (御手洗54歳くらい)
「セント・ニコラスの、ダイヤモンドの靴」 (御手洗34歳・石岡君32歳)

「シアルヴィ館のクリスマス」は、導入部という位置づけだと思いますが、読まなくても問題ないし、個人的にはつまらなかった。 

「セント・ニコラスの、ダイヤモンドの靴」
クリスマス時期の心温まる中編小説。
中編という長さだと思いますが、もう少し短くても良かったと思う話でした。
子供に優しい御手洗が見られる内容で、私は割とこういう話が好きです。

しかしクリスマスはやはり食傷気味。(今回、読んだ3冊すべてクリスマスの話がありました)
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タグ:御手洗潔

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