クマのプーさんの魅力 〜最終話より作品考察〜
【注意事項】
考察部分は、最終話のネタバレを含んでいます。
未読の方はご注意下さい。

【前置き】
昔、プーさんはディズニーキャラだと思っていました。
日本人では、そういう人が大多数なんじゃないかな〜と。
ディズニー版プーさんは、声がおじさんで、私に深い打撃を与えてくれた思い出があります(笑)
英語版でも日本語版でも声はおじさん。
何故!? あれは、絶対におかしい。
さて。
中学の頃、原作に興味を持った私は、本を買ったり関連書籍を読んだりして、独自にプー通の道を歩んでいました。
挿絵は、ディズニー版を見慣れた者にとっては馴染みにくかったものの、すぐに慣れました(笑)
原作はイギリスの作家A.A.ミルンの作品で、イラストはE.H.シェパード。
二人は風刺雑誌パンチのメンバーでもあります。
作者の息子であるクリストファー・ロビンが、プーさんに登場する同名キャラのモデルなのは有名な話ですよね。
ただし現実のクリストファー・ロビンが成長した時に「世界一有名な子供」として名前だけが一人歩きする様を疎ましく思っていたというのは、意外と知られていないかもしれません。
【プーさんの物語の何処が好きか】
ぶっちゃけ、小さな子供向けの物語ですから全体的には他愛の話ばかりです。
大して面白くなかったです、私は。
ところが『プー横丁にたった家』の最終話!
これが素晴らしいので、大人にも支持される名作になりました(断言)。
以下の考察で、内容について語ります。

【考察】
『プー横丁にたった家』 クリストファー・ロビンとプーが、魔法の丘に出かけ、ふたりはいまもそこにおります。より
この物語は、クリストファー・ロビンとの別離で終わります。
ここだけは、子供より大人の方が感動する内容になっています。
(※実際、私は最初に読んだ時(中学生当時)は、このストーリーを理路整然と説明できませんでした。)
最終話の流れは、こうです。
1. 冒頭でクリストファー・ロビンが行ってしまうことが語られる。
2. なぜ行ってしまうのかは説明されない。誰も知らない。
3. 皆で、ロビンのお別れ会をする。 一同解散。
4. 残ったプーとロビンは二人きりで話をしながら歩き、森へ行く。
クリストファー・ロビンが行ってしまう理由。
これは、プーとロビンの会話から明かされます。
プー、きみね、世界中で一番、どんなことをするのが好き?
(中略)
ぼくが一番していたいのは、何もしないでいることさ。
ただブラブラ歩きながらね、聞こえないことを聞いたり何も心配しないでいることさ。 (注1)
こんな風に自分のことをプーに聞かせる場面があり、しばらくして次のセリフに続きます。
ぼく、もう何もしないでなんか、いられなくなっちゃったんだ (注2)
ここから読者は、ロビンが旅立つ理由と最終話で語られている内容が分かります。
この一言は、クリストファー・ロビンの幼年期の終わりを示している言葉なのです。
ロビンにとって、魔法の森は安全で心地よい子供の遊び空間である反面、大きな変化もなく非常に閉鎖的な空間でもあります。
子供は成長に伴い、自ら進んで何かに挑戦したり、学びたいという気持ちがでてくるもの。
「何もしないでなんか、いられない」というのは、そういうことです。
故に、魔法の森から外の世界へ出て行くことになったのです。
なお、ここで重要なのはクリストファー・ロビンが完全に魔法の森と縁を切ろうとしている訳ではない所。
以下の会話が核心になります。
「プー、ぼくが――あのねえ――ぼくが、なにもしないでなんか、いなくなっても、時々、きみ、ここへ来てくれる?」
「あなたも、ここへ来ますか?」
「ああ、来るよ、本当に。プー、ぼく、来るって約束するよ」
「そんならいい」
「プー、ぼくのこと忘れないって約束しておくれよ。ぼくが百になっても。」
(中略)
「プー。」「もしぼくが――あの、もしぼくがちっとも――」
「例え、どんなことがあっても、プー、きみはわかってくれるね?」 (注3)
そこで、ふたりは出かけました。ふたりの行った先がどこであろうと、またその途中にどんあことが起ころうと、あの森の魔法の場所には、ひとりの少年とその子のクマが、いつも遊んでいることでしょう。 (注4)
これを読むと「プーと過ごす時間」や「魔法の森という場所」がロビンにとってどんな存在意義を持つのか、よく分かります。
つまり、これらは幼年期の思い出であり、癒しの存在である訳です。
(魔法の森は、言い換えると時々帰りたい場所という感じ)
自分が何歳になっても、どんなことがあっても、例え魔法の森へ行かなくなっても、それでも無条件で待っていてくれる存在のプー。
そういう存在がいるのは嬉しいことです。
プーさんの物語は児童文学ですが、大人になってから読み返すと新たな発見があるかもしれません。
ちなみに私は洋書と岩波文庫の両方持っていますが、石井桃子さんの翻訳は子供の言葉や気持ちといった部分を繊細に表現していて素晴らしい!
【引用箇所】
『プー横丁にたった家』 A.Aミルン作, 石井桃子訳, 岩波少年文庫, 1985年(第28刷改版)
(注1)p271-274 (注2)p280 (注3)p280-281 (注4)p282
★今回の記事は、数年前に真面目に書いたもの(笑)を修正して掲載しました。
【関連書籍】
クマのプーさんの哲学

【評価】 ★★
人気のキャラクター使って、取っ付きにくい哲学を説明しよう!という類の本。
プーさんは、自分が無知なことを知っているから、無知の知だとかね。
この手の本はあまり好きじゃないので斜め読み。

【評価】 ★★★★★
プー世界の入門書。
原作を読む前に、こちらから入った私としては非常にオススメ。良書です。



