【評価】 ★★★★
【一言】 現実的な厳しさを感じて
【前置】 この本は
十二国記シリーズの一冊です。
シリーズものですが、私は『図南の翼』しか読んだことがありません。
また数年前に読んだので、以下は感想というより
“記憶に残る印象”です。
※ 【ネタバレ】を含みますので、未読の方はご注意下さい。【あらすじ】物語は、聡明な少女・珠晶が腐敗した国を嘆き、自分が王になるため昇山するというもの。
その過酷な旅の過程がメインになっています。
【感想】正直な所、私は
「物語として面白い!」というより、主人公の言動や作中で起こる出来事に対して「う〜ん…」と思うことが、しばしばありました。緻密な世界設定に感心しつつ、そんなことを考えている時点で、物語には夢中になっていない自分に気づくのですが(笑)
■何に考えさせられるのか?この小説のストーリーは、ご都合主義ではなく、わりと現実的な観点で語られています。
そういったエピソードに、少し考えさせられてしまうのです。
いくつか例を挙げてみます。
●物語序盤で、主人公が夕食を残す場面正確なセリフは覚えていませんが、
彼女の世話係が
「食事を粗末にするな、食べられなくて困っている人も大勢いるのに」 と注意をします。
ここで私は世話係の言い分は最もだと感じました。
しかし主人公の少女は
「今 自分が夕食を残しても残さなくても、状況は何も変わらない」 と反論し、確かにそれも事実だと思うのです。
例えば、日本では外食産業やスーパーから毎日たくさんの食品が廃棄処分になっています。
こうした状況について、飽食の時代を感じると共に食べ物を粗末にすることに心が痛みます。
(※賞味期限についての批判ではありません)
しかし、もし捨てなかったとしても、【それで食糧難の発展途上国の人が救われるのか?】と言えば、
答えはNo (いいえ)です。
全く別の問題なのです。
●やむをえず見殺し旅を一緒にしてきた動物(架空の生き物で馬系と思われる)を囮にして、妖魔から逃げる場面があります。
これが普通のライトノベルや少年漫画なら、正義感の強い主人公の画策によって“皆で助かる”という展開になりそうですが、違うんですよねー。
「囮にしなければ、全滅するだけ」その通りだと思います。
主人公もそれは分かっており、悲しいけれど見殺しに…となります。
状況判断としては正しいと思いますが、罪のない動物が悲しい結末になると何ともいえません。
・・・と、こんな感じで所々
「現実的にはこうである」と感じさせられる場面が出てきます。
おかげで、どうも物語に入り込めなかったような気がしました。
補足すると、『図南の翼』は別に娯楽性のない寓話ではありません。
小説としても読みやすい部類に入ると思いますし、フィクションにおける珠晶のような聡い子供も好きです。